昨日、第21回の『えんじゅトークサロン』が開催された。それまでの暖かな陽気が一変して、雨の降る肌寒い日になった。そんな中でも多くの方に来店していただき、大いに盛況な回となった。
今回は、「やさとことばの会」の山田みどりさんから「辞書の表現」と題して、お父さんが編集主幹となって出版された『三省堂 新明解国語辞典』について、その目指したものが何であるかを娘の視点から話していただいた。『新明解国語辞典』は、出版当初からそのユニークな個性が有名で多くの評論や小説が取り上げている。僕も昔、ずいぶんと「気骨または奇骨」ある辞書だなと驚いた覚えがある。
今回のトークサロンでは、山田みどりさんから、『新明解国語辞典』の独特の個性(「新解さんの謎」とも言われる)について、初版の序文やいくつもの項目を取り上げて具体的に示していただいた。また、辞書誕生の経緯についても説明があった。これは山田みどりさんにとっては、父親の山田忠雄氏がこの辞書で目指したものの再確認であるとともに祖父である国文法学者の山田孝雄氏から繋がる一族の言語学者の流れの確認でもあったようだ。一方、私たちにとっては「新解さんの謎」の謎解きであり、非常に知的好奇心を刺激するものであった。
しかし、話は単に辞書の説明だけには止まらない。山田みどりさんの説明の端々には、父親である山田忠雄氏への深い尊敬と愛情が現れていて、聞いている参加者全員もその姿に感動した。きっと、今回のトークサロンを準備する過程が、改めて父親を思う契機になったのだろう。殊に、辞書の第5版以降父親の志が途切れたかのように思えたが、最新版の第8版で再び初版の序文が掲載され、項目の語釈に父親と同じ方向性を見つけたと述べた時の喜びの表情は印象的だった。
山田みどりさん、お疲れ様でした。有難うございました。
