昨日、後半期の第18回『えんじゅトークサロン』が盛況にスタートした。今回は、筑波大学名誉教授・日本茅葺き文化協会代表理事の安藤邦廣先生による「八郷の茅葺き民家の保存と活用について」がテーマであった。
前半は、これまでに安藤先生が手掛けた建築作品が紹介された。まずは、新潟県十日町市の事例である。地震でひどく痛んだ山村の古民家を陶芸家たちと共同でリノベーションして見事に復活させた。それを地元の人たちが農家レストランや宿泊場所、コミニュケーションの場として活用している。また、続いて筑波山麓にある『美六山荘』の紹介があった。
後半は、視点を八郷に移して、茅葺き民家の材料となる「萱」の確保についてから始まった。かつては、八郷のどこにでも有った「茅場」が、現代ではほとんど消失してしまった。そこで、つくば市の『高エネルギー研究所』の地上部の萱を利用しているとのことである。建築例では、筑波大学が研究施設として復活させた小屋地区の茅葺き民家と若者家族が有機農業を目指している『やまだ農園』が紹介された。
むすびは、地球温暖化防止に関連して、いかに茅葺き建築が、二酸化炭素の循環・固定システムとして優れた機能を発揮するかという説明である。茅場に生育する萱→それを大量に使用する萱屋根→古くなった萱を肥料として農作物を育てる ーーー このゆっくりした大きな循環が、長期間にわたって炭素を固定する。これは、極めて現代的な課題に対応している建築であると言える。
八郷の山裾にたたずむ茅葺き民家の風景は美しいと思う。しかし、その「美しい」と感じる背後には、優れた炭素循環のシステムが存在しているのだと、今回の安藤先生の講話を聞いて知る事が出来た。そして、茅葺き建築は現代的なのだと。
安藤先生、お忙しい中有難うございました。